たま漢方堂の『健康豆知識~春夏秋冬~』

2006-07-23

Vol.225 ガン幹細胞

ガンを切除したのに再発するのはなぜか。
また、抗ガン剤が効かないガンがあるのはなぜか。
こんな疑問に答えてくれる記事が、日本経済新聞2006年4月2日に掲載されていました。

記事によれば、ガン細胞を生み出す製造工場ともいうべきガン幹細胞の存在が相次いで見つかり、この幹細胞を攻撃する治療法が開発されれば再発防止につながるので、「ガン治療に革命をもたらすのではないか」との期待が高まっているとのことです。

ガン幹細胞は組織の深部に存在し、ガンを生み出し粘膜上部に送り出す源の細胞です。昨年秋に発見された大腸の幹細胞候補は、粘膜にある小さなくぼみの底に眠っていました。そのことから、そこで作られたガン細胞が粘膜上部に次々と押し出されてガンが出来るのではないかとみられています。

このガン幹細胞は正常な幹細胞の遺伝子が傷ついてできるという仮説が立てられており、正常な幹細胞が備えている仕組みと同じ機能を備えているのではないかと仮定されています。

正常な幹細胞は自己増殖と自己複製の機能を持ちます。また、自分を攻撃する毒を排除することができるので、これと同じ機能をガン幹細胞が持つとすると、ガン幹細胞は自己複製と増殖を繰り返しながらガンを増やし、抗ガン剤を自分に対する毒とみなして排除することが出来るということになります。抗ガン剤はガンを生み出すガン幹細胞には排除されてしまうというのです。

事実、抗ガン剤でガン幹細胞が死滅する割合はガン細胞の半分以下とのこと、大腸ガンで見つかったガン幹細胞候補の場合、抗ガン剤を細胞外にくみ出すたんぱく質での遺伝子が多くみられました。
また、ガン幹細胞に放射線を照射すると、転移する可能性の高い悪性のガン細胞が増えることもわかりました。
このことから研究者は「ガン幹細胞を最初に上手く取り除くことが出来れば、放射線治療の効果が高まるのではないか」と見ています。

人体の細胞には非分裂細胞・分裂細胞があります。
正常な幹細胞は分裂細胞で、様々な細胞に分化し分裂を繰り前しますが、50回繰り返すと分裂は止まります。これは細胞の老化と考えられています。一方、ガン細胞は分裂を繰り返し、増殖した後も老化せず分裂を続けます。

とめどなく増殖するガン細胞を生み出すガン幹細胞。
ガン幹細胞を狙い撃ちする治療法、根治両方の研究が待たれます。